①「○○(名詞)を行う」を使わないと、単調な文章から抜け出せる。
②漢字とひらがなのバランスがよくなり、読みやすくなる。
なぜ「行う」は避けるべきなのか
一般の人の文章を読んで、これは新聞記者はしないなあと思う1つが、今回紹介する「行う」の多用です。
「行う」は便利なので、つい使ってしまいます。「行う」が繰り返されると、それだけで文章が単調で、読みにくくなります。
例文1 倉庫の廃棄物処理を行いました。
例文2 歯科衛生士のAさんが児童に歯のブラッシング指導を行いました。
皆さんの中には、「どこが悪いの?」と思う人もいるでのはないでしょうか。
こうした「行う」に使い慣れると、1つの文章で何回も使うようになります。新聞記者時代に最初に注意されるポイントです。
文章が上達するには、多様な表現で内容を的確に伝える言葉遣いが求められます。「行う」は、便利なだけに、それに頼ってしまうと上達から遠ざかります。
何よりも、ダブリ感が出て、メリハリのない、つまらない文章になってしまいます。
例文3 彼は部屋に入ると、掃除を行いました。その後、食事を行い、ギターの練習を行いました。就寝前には、両親に向け、手紙の執筆を行いました。
極端な例ですが、これに似た文章は実際によく見かけます。
「○○を行う」は動詞化する
では、例文1、2は、どのように直すといいでしょうか。
次の例文を見てください。
例文4 倉庫の廃棄物を処理しました。
例文5 歯科衛生士のAさんが児童に歯のブラッシングを指導しました。
基本的には、このようにシンプルに直すだけでも、随分とよくなります。
つまり、「廃棄物処理を行う」を「廃棄物を処理する」に直し、「ブラッシング指導を行う」を「ブラッシングを指導する」に換えます。
「行う」を使わずに、「廃棄物処理」「ブラッシング指導」に含まれる動作の部分を切り離して、動詞にするわけです。
日本語では、「◯◯(名詞)を行う」( 「◯◯(名詞)をする」 でも同じ)という言い方ができるので、これに慣れてしまうと、無意識でこのパターンを続けてしまいます。
楽なので、この表現ばかりに逃げてしまうと、表現を工夫しなくなります。
「◯◯を行う」のパターンは文を重くする
「◯◯を行う」のパターンは、◯◯の部分に、その動作を名詞で表現した言葉が入ります。ここが長くなり、漢字が続くことも多いので、文が重くなるわけです。
今回の例で言えば、「廃棄物処理」「 ブラッシング指導」ですね。
これは、本来、「廃棄物 +整備」「ブラッシング+指導」なのですが、「行う」を使うことによって、それぞれ2つの単語をドッキングしているのです。
つまり、「行う」を使えば、その前に名詞を置くことで、何でも表現できてしまいます。
極端な例だと、こんな文もありえるわけです。
例文6 春期販売計画策定を行う。
とても重い感じの文ですね。原因は、「春期販売計画策定」の部分が漢字ばかりの長い名詞になっているからです。
なぜ、こういう重い表現にな ってしまうのでしょうか。これも癖です。「行う」はできるだけ使わないように意識するだけ変わってきます。
例文7 春期の販売計画を策定する。
これだけでも軽くなります。
もっと簡潔にするなら、次のようにもできます。できるだけ堅苦しい表現は使わないのが原則です。
例文8 春の販売計画を決める。
少し解説すると、例文7のように漢字が並ぶと読みにくいので、間に「の」 を入れられる箇所で分けて、「策定する」も「決める」と簡単な言葉にしました。
「行う」を使わなくても文は書ける
最後に、「行う」が連続した例文3を読みやすいように直したいと思います。
例文3 彼は部屋に入ると、掃除を行いました。その後、食事を行い、ギターの練習を行いました。就寝前には、両親に向け、手紙の執筆を行いました。
筆者なら、次のようにします。
例文9 彼は部屋に入ると、掃除をしました。その後、食事をとり、ギターを練習。就寝前には、両親に向け、手紙を書きました。