簡潔に書く

主語を省く

なぜ主語を省略するのか

 主語も可能な限り、省略すると、文章がすっきりして、リズムが出てきます。

 主語がなければ、文章の 意味が分からないのではないか? そう思われる人もいそうですが、実は、この主語の省略というのがとても重要なのです。

  大きな理由は次の2つです。

(1) 主語が省略できる文章を書くこと=主語をそろえて文章を書くことなので、読みやすくなる。
(2) 余分な主語を外すと、文章にリズムが出る。文に勢いと力強さが出る。

主語が変わると冗長になる

 順に解説します。

 まず、次の例文を見てください。よくある文です。

例文1 私が子どものことで学校に要望を伝えに行ったところ、担任の先生はいなかったが、帰宅すると、すぐに担任の先生が電話をしてくれて、私は要望を伝えられた。

 この文のどこが良くないのか。

 だらだら感があるのは分かると思います。 まさに、主語の問題なんです。主語がどんどん変わるのです。

 では、分解して考えてみましょう。

私が子どものことで学校に要望を伝えに行ったところ」→主語は私
「担任の先生はいなかったが」→主語は先生
「帰宅すると」→主語は私
「すぐに担任の先生が電話をしてくれて」→主語は先生
私は要望を伝えられた」→主語は私

 このように、主語が次々変わると、読みにくくなるうえ、主語を省略できないので、余計に冗長になります。

最初から主語をそろえる

 こういうときは、主語をそろえるように書き直します。例えば、主語を「私」にそろえると、次のようになります。

例文2 私が子どものことで学校に要望を伝えに行ったところ、担任の先生に会えなかったが、帰宅すると、すぐに担任の先生から電話があり、私は要望を伝えられた。

 これで主語は、すべて「私」で統一されました。主語が省略できるところは省略する と、すっきりします。

 「私は」という主語は、なくても分かる上に、全体の主語が統 一されましたので、省略もしやすくなります。

例文3 子どものことで学校に要望を伝えに行ったところ、担任の先生に会えなかったが、帰宅すると、すぐに担任の先生から電話があり、要望を伝えられた。

 かなり簡潔になりましたが、まだ冗長です。文は短く切り、読点が1、2になるようにするのが鉄則でした。「担任の先生」「要望を伝え」という言葉がダブっています。これも省略できます。どんどん簡潔にしましょう。

例文4 子どものことで学校に要望を伝えに行った。担任の先生には会えなかったが、 帰宅後、すぐに電話があって話すことができた。

 主語をそろえ、文を簡潔にすることで読みやすくなり、文が力強く、勢いよくなります

 また、ここでは触れませんが、同じ内容について書かれた箇所を1箇所に集めることで主語を省略しやすくなります。

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「私は~思う」を考える

 特に主語が「私」の場合は、「思う」と受けることも多くなって、文が弱くなりがちです。

例文5 私は、すでにユーチューブからビジネス情報を得ている若者は多いと思います。

例文6 すでにユーチューブからビジネス情報を得ている若者は多い

 例文6の方が言い切りっているので、語感が強くなります。

 こうした方法は、セールスライティングでも、よく使われます。

 「思う」という主観でなく、言い切りにすることで客観的な印象を相手に与えることができます。

 もちろん、ある程度、根拠がないと使えませんが、「私は~思います」だと主張が弱くなることは、覚えておくとよいでしょう。

ABOUT ME
井上 昇治
1964年、名古屋市生まれ。新聞社で約30年間、記者を務めた後、社内の教育・研修部門で、企業研修、大学の授業、自治体の生涯学習講座などを担当。記者時代のスキルに独自のアイデアを盛り込んだ教材を開発中。社会人として、あるいは趣味で文章を書く人の道しるべになるポータブルスキルとしての「伝わる文章」の書き方を伝授している。